2008/05/04

勝手に論文紹介(4月分)

今月も懲りずに需要があるのかひたすら怪しい論文紹介をします。まぁ、こういう機会がないとダウンロードしただけで満足してしまい全く読まないので、自分にとってはちょうどよいのでしょう。きっと。でも、ちゃんとは読んでないので、間違っててもご容赦ください。

J. Fan, M. Sammalkorpi, and M. Haataja, "Domain Formation in the Plasma Membrane: Roles of Nonequilibrium Lipid Transport and Membrane Proteins", PRL 100 (2008) 178102.
いわゆる「脂質ラフト」に関するシミュレーションの論文。それだけなら特に珍しくはないのだが、ラフトに埋め込まれた膜タンパクを考慮した結果、膜タンパクのクラスターができていくっぽいよ、というのを提案している。

L. Brun, M. Pastoriza-Gallego, G. Oukhaled, J. Mathe, L. Bacri, L. Auvray, and J. Pelta, "Dynamics of Polyelectrolyte Transport through a Protein Channel as a Function of Applied Voltage", PRL 100 (2008) 158302.
印加電圧によって荷電高分子がチャネルタンパクを埋め込んだ脂質膜を透過する様子を観測した論文。透過する高分子の数やポアを透過するのに必要な時間は印加電圧に依存する。DNAを透過させる論文は割とよく見るのだが、高分子を用いたのは知らない。DNAと太さが違うので若干振る舞いが変わってるということだったが、おそらくstiffnessも効いているのではないかと思う。

F. Campelo and A. Hernandez-Machado, "Polymer-Induced Tubulation in Lipid Vesicles" PRL 100 (2008) 158103.
以前、リン脂質ベシクルに両親媒性ポリマーをアンカーすると、"Tubulation"(アメーバみたいにチューブが伸びていく)という現象が起きる、という報告[I. Tsafrir et al., PRL 91 (2003) 138102]があったらしいのだが、それについて理論的に考察した論文。理論より実験に興味あるのだけど、動画とか落ちてないだろうか。

P. Riello, M. Mattiazzi, J. S. Pedersen, and A. Benedetti, "Time-Resolved in Situ Small-Angle X-ray Scattering Study of Silica Particle Formation in Nonionic Water-in-Oil Microemulsions", Langmuir 24 (2008) 5225-5228.
W/Oエマルションを利用したシリカゲル粒子の作成におけるシリカゲルの形成過程を時分割X線小角散乱で観測した論文。何となく興味があったので落としてみたのだが、ちゃんと読んでいないこともあってどの辺が特筆すべき点なのかよくわからなかった。

D. M. Spori, T. Drobek, S. Zurcher, M. Ochsner, C. Sprecher, A. Muhlebach, and N. D. Spencer, "Beyond the Lotus Effect: Roughness Influences on Wetting over a Wide Surface-Energy Range", Langmuir 24 (2008) 5411-5417.
ロータス効果(複雑な表面による撥水効果)を表面形状に対して定量的に調べた論文。golf-tee shaped micropillars (GTMs)って形状だとpinning効果が効いて親水的な成分があっても疎水的に働くらしい。

J. M. D. Lane, M. Chandross, M. J. Stevens, and G. S. Grest, "Water in Nanoconfinement between Hydrophilic Self-Assembled Monolayers", Langmuir 24 (2008) 5209-5212.
S(CH2)8COOHにnmスケールで取り囲まれた水分子の振る舞いをMDシミュレーションした論文。親水性のCOOH末端に近い水分子ほど配向し、拡散係数も減少する、という当たり前といえば当たり前の結論。

T. M. Weiss, T. Narayanan, and M. Gradzielski, "Dynamics of Spontaneous Vesicle Formation in Fluorocarbon and Hydrocarbon Surfactant Mixtures", Langmuir 24 (2008) 3759-3766.
多成分の界面活性剤混合系で形成されるSmall Uni-lamellar Vesicle(SUV)の形成過程を時分割X線小角散乱で観測した論文。最初は球状、もしくは紐状だったミセルが混じり合うと板状のミセルを形成、それが成長してある程度の大きさになるとSUVへと転移するらしい。大きくなると曲がりやすくなるので縁によるエネルギーロスを減らす方向に転移が進む、という理解でよいのだと思う。