2008/07/21

バージョンアップ

東京大学物性研究所が所有しているNSE分光器(iNSE)のデータ解析プログラムESA2008をバージョンアップしました。
webページ(http://neutron-www.kek.jp/home/yamada/)からigorファイルとマニュアルがダウンロードできるようになっています。
今回は、バックグラウンドの処理を実装したので、散乱強度が弱いデータの質が改善すると期待できます。
ただ、実装に不具合が残っている可能性もありますので、もうしばらく様子を見た方がいいのかも。
あと、ついでにソースを少しだけ整理しました。
ていうか、今までが汚すぎたのですが。

あと、profileに獲得研究資金を加え、publication listを少しだけ変えました(in pressになっていたのを正式に記載)。

2008/07/17

Vista導入

たまには仕事から少し離れた話でも。

今年は科研費(若手B)を無事もらうことができたので、パソコンを新調しました。
Dynabook SS RX1ってやつで、128GBのSSD(シリコンメモリ)を搭載しているモデルです。
こいつにはWindows Vistaがのっているんですが、性能がそこそこということもあって、まぁ割とさくさくと動いてくれてます。
ただ、言われ尽くされていることかもしれませんが…やっぱりVistaくんは使いやすいとは言い難いです。

何で使いにくいのかなぁと自分なりに分析してみたりしたのですが、結論としては「すべてが60点」感じでしょうか。
新しく強化された機能自体は悪くないものだし、コンセプトも理解できるのですが、実装が不十分だったり、インターフェースがダメだったり。
そうなるとその機能自体が悪者のように感じてきて、ストレスが倍増。
そしてさらに細かいことが気になるようになる…の悪循環って感じです。

これは最近のソフト全般にいえることかもしれませんが、「余計なこと」を「勝手にされる」ってのが一番腹が立ちます。
昔はパソコンを使う、というとパソコンを服従させる、ことだったような気がするのですが、最近はパソコンに振り回されてる、と感じる機会が増えてるような気がします(もっとも、自分が勉強をサボっているせいかもしれませんが)。
まぁ、文句ばっかり言っても始まらないので、とりあえず手なずけられるようちょっとずつ努力していきたいと思います。

以上、とりとめのない雑記でした。

2008/07/14

勝手に論文紹介(6月分)

今月は少なめです。

G. Oukhaled, L.Bacri, J.Mathe, J. Pelta, and L. Auvray, "Effect of screening on the transport of polyelectrolytes through nanopores", Europhys. Lett. 82 (2008) 48003.
チャネルタンパクを脂質膜に埋め込み、電場をかけて荷電高分子(ここではdextran sulfate)を通す、という割とよくある実験。この研究の新しいところは、これまでの研究はほとんどが高い塩濃度、つまり電荷が十分に遮蔽される状態での実験だったのだけど、塩濃度を薄くしてDebye長がポアサイズよりも大きいような条件で実験するとどうなるか?ってことを調べたところらしい。で、結果としては高分子が十分長ければ、Debye長がポアより大きい場合に高分子が通らなくなる。まぁわかりやすい。

V. Kantsler, E. Segre and V. Steinberg, "Dynamics of interacting vesicles and rheology of vesicle suspension in shear flow", Europhys Lett. 82 (2008) 58005.
準希薄条件下にあるリン脂質ベシクルのずり流動場中におけるダイナミクスを調べた論文。これまでも孤立したベシクルで戦車のキャタピラみたいな回転運動などが報告されているが、ベシクル間に相互作用があると、長距離的な流体力学的効果によって流れに対する傾き角やベシクル自体の速度が振動するらしい。

I. Tucker, J. Penfold, R. K. Thomas, I. Grillo, J. G. Barker, and D. F. R. Mildner, "The Surface and Solution Properties of Dihexadecyl Dimethylammonium Bromide", Langmuir 24 (2008) 6509.
DHDABというイオン性界面活性剤(二本鎖のアンモニウム塩)の構造を調べた論文。似たような界面活性剤として鎖の長さが違うものが色々調べられているが、基本的に低濃度で多層膜ベシクルが、高濃度になるとラメラ相との共存状態になる、という感じ。で、この系で実験してみたところ低濃度で現れる多層膜ベシクルが二層膜なんじゃない?ってことがわかったとのこと。何か「二層」が選択的に形成されるってのにぱっと違和感を覚えるが、とりあえず実験データとしてはそういうことになってるっぽい。

A. J. Diaz, F. Albertorio, S. Daniel, and P. S. Cremer, "Double Cushions Preserve Transmembrane Protein Mobility in Supported Bilayer Systems", Langmuir 24 (2008) 6820.
基板上に作る脂質二重膜、いわゆる支持膜の作成法に関する論文。従来の方法だと、支持膜に膜貫通タンパク質を埋め込んだときに、面内での拡散がほとんど起きていない、という問題があったが、固体基板の上にタンパク質(支持膜に修飾するのとは別のもの)をひっつけてからPEGをのせるという二層構造にするとこれが改善される、ということらしい。

K. Zhang, X. Yu, L. Gao, Y. Chen, and Z. Yang, "Mesostructured Spheres of Organic/Inorganic Hybrid from Gelable Block Copolymers and Arched Nano-objects Thereof", Langmuir 24 (2008) 6542.
ゲル化するブロック共重合体PTEMPM-b-PSってのをエアロゾルするとonion-likeな多層膜やシリンダーのような内部構造ができるらしい。で、これを破壊するとナノサイズのプレートやロッドができますよ、って話らしい。

S. A. Pandit, S.-W. Chiu, E. Jakobsson, A. Grama, and H. L. Scott, "Cholesterol Packing around Lipids with Saturated and Unsaturated Chains: A Simulation Study", Langmuir 24 (2008) 6858.
生体膜につきもののコレステロールがリン脂質膜に与える影響を分子レベルで理解しようと、MDシミュレーションを行った研究。DPPC,DOPC,POPCというリン脂質との混合系でシミュレーションしたところ、POPCとの混合系でコレステロールの占有体積が一番小さくなることがわかった。で、これが実際のコレステロールの構造と比較してなぜそうなるのか?ってことを議論しているっぽい。