2009/11/27

J-PARC@100kW運転

ずいぶんと間が空いてしまいました(いつも通りではありますが)。

この2ヶ月間、何をしていたかといいますと、中性子反射率計という装置の整備に全力投球しておりました。
こいつはJ-PARCという東海村にある陽子加速機施設に作っている装置なので、今住んでいるつくばから1時間ちょいかけて通っているわけです。

一般的に、加速機というのは電気代がかかる夏場はお休みしているのですが、10月は運転が再開されたということでビームを使った装置の調整をしていました。
ビームは24時間でていますので、そうなるとほぼ毎日夜中まで作業をすることになってしまい、帰りはもうへとへと。
実は居眠りしかけたこともありまして、非常に危険な状態でした。

それに懲りて11月は布団を持ち込んで居室のソファーベッドで仮眠を取ることにしました。
このときには装置の整備も完了したので、実際に使ってみたいというユーザーの方にテスト実験をもらったのですが、これまで1日かかっていた測定が数時間で終了してしまうという予想以上のハイペース。
質の高いデータが短時間で測定できるというのはすばらしいことではあるのですが、まだ測定の自動化もあまり進んでいませんので、夜中も人が張り付いている必要があります。
僕は基本的にはサポート要員という立場ではありますが、装置を立ち上げたばかりと言うこともあってなかなか離れられない状況でした。

そんなある日、「これはもう身が持たない」ということでふらっと不動産屋さんに立ち寄り、あっという間にアパートの部屋を押さえてしまいました。
うちのスタッフはほとんどがつくばから通っているのですが、家族のことを考えると皆さんなかなか引っ越せない様子です。
僕も、出張とか色々と便利ということでがんばってつくば生活を死守してきたのですが…あっというまに心が折れてしまいました。
まぁ、魚とかおいしいので、これからは東海村生活を満喫していきたいと思います。

2009/09/30

物理学会

熊本大学で開催された物理学会に行ってきました。
普段なら領域12のソフトマター物理で発表するのですが、今回は領域10のX線・粒子線で自分が担当している中性子反射率計の発表を行いました。
秋季大会ということで複数件の発表が認められているのですが、発表締め切り前にばたばたしてしていたということもあって、ソフトマター物理での発表は無しという形になってしまいました。
当日は領域12で発表を聞いたりはしていたのですが、自分は発表せずに人の話を聞き続けるというのはなかなか心苦しかったです。

今度は面倒くさがらずに、ちゃんと発表しよう。

2009/09/06

本免とれました

9月1日付けで助教に着任しました(とはいっても、所属は今までと全く変わりませんが)。
正直、着任前は本当に自分で良いものだろうかとびびっていたのですが、状況を受け入れ始めたのか今は(少しは)落ち着いてきています。
これからは慣れない種類の仕事も増えていき、いよいよ大変になっていくんだと思いますが、自分で選んだ研究者の道ですし、何とかがんばっていきたいですね。

まぁ、立場が変わっても自分という人間が劇的に変わるわけではありませんし、あんまり気負いすぎないように注意しながら、新しい仕事を自分になじませていければ良いなぁと考えています。
そういうわけで、今後ともよろしくお願いいたします。

2009/08/14

位相問題

当ブログですが、いろんな人に「更新してない」と言われ続けてます。
みんな意外と見てるもんですね。
とりあえず、何事もなかったかのように更新したいと思います。

先日、久しぶりに論文チェックをしてたらタイミング良く面白そうな論文を発見しました。
Emil Wolf, "Solution of the Phase Problem in the Theory of Structure Determination of Crystals from X-Ray Diffraction Experiments", Phys. Rev. Lett. 103 (2009) 075501.

私が良く用いているX線や中性子線の実験では、試料で散乱されたビームを観測します。
これは、レントゲンのように通常我々が見ている「実空間」ではなく、「逆空間」とよばれる普通の世界とは違った空間での試料の様子を観察する、という手法です。
具体的には、実空間をフーリエ変換すると逆空間になるのですが、とにかく、こういった物の見方をすると(例えば街路樹のように)周期的に配列した物をうまく観測することができるのです。
ただし、「逆空間」から我々の住んでる世界である「実空間」へと戻してあげるのはなかなか困難な作業で、それを妨げている問題の一つが「位相問題」とよばれるものです。
これは、逆空間上のデータを実空間に戻す際に重要な位相と呼ばれる情報が観測不可能である、という問題で、これが分かれば実空間へと戻してあげることが非常に簡単になるのです。

この論文では、その「位相問題」を解決するためにレーザーのように波の山と谷がそろった"coherent"なビームを使えば何とかなりそうですよ、という手法を紹介しています。
要するに、ビームの位相が揃ってれば、逆空間での位相も定まるんじゃない?、というのが話のエッセンスのようです。
同僚の話によると、coherentなビームを使えば位相問題の解決につながるというのは昔から言われていることらしいので、この論文のどういった部分が革新的なのかはちゃんとフォローできてませんが、多分、具体的な実験方法を提案していることが新しいのだと思います。
まぁ、提案だけで実際のデータは無いのですが、「このテーマはちゃんと勉強しなきゃな」と久しぶりに思えた論文でした。

しかし、X線にしても中性子線にしても結局行き着くところは「光学」で、よく考えたら自分はちゃんとそれをまじめに勉強したことが無いのです。
ニュートンの時代に完成された古い学問ということもあって分かった気になってますが、基礎的なもの、最先端のものを含め、もっと光学を勉強しなきゃいけませんね。
反省。

2009/04/27

仮想雑誌

先日、PREにacceptされた論文ですが、
- Virtual Journal of Nanoscale Science & Technology
- Virtual Journal of Biological Physics Research
への掲載連絡が来ました。

virtual journal誌とは、様々な雑誌に投稿された論文の中でめぼしいものを見つけて集める、というものらしいです。
噂には聞いていたのですが、いざ自分に連絡が来るとイマイチ何かよくわからない感じがしますね。
virtual journal誌に対する周りの評価もまちまちです。
ただ、とりあえず自分のやった仕事が誰かの目にはとまった、ということですから、その点に関しては素直に喜んで良いのだと思います。

ちなみに、今もう一本論文を書いてます。
来月には投稿できるかな、という感じです。
さて、今度はどうなるでしょうか。

2009/02/24

つくばソフトマター研究会

昨日、今日と筑波大学で開催されたつくばソフトマター研究会に出席しました。

今年に入って、つくば近辺の大学、研究所に在籍しているソフトマター関連の研究者で割と定期的に集まる機会が増えていたのですが、今回はソフトマター物理の特定領域の協賛で研究会を開いた、という流れです。
講演の打診があったのでほいほいと引き受けたのですが、思ったよりも人数も多く、大規模な研究会になっていたのでちょっとびっくり。
場の雰囲気としてはざっくばらんな感じで、活発な議論が交わされていました。

今回、昔の研究結果に加え、最近の実験結果を急いでまとめて発表したのですが、まだこなれていないこともあって、少しとっちらかっているかなぁと感じながらしゃべっていました。
でも、公演後の質問もそれなりにあったし、まぁまぁだったのかな?という印象。
その後、懇親会に流れ込んだのですが、個別に話してみると思った以上に好感触。
これはさっさと論文にまとめるかな?
まだ、細かい解析はできてないけど、ものすごく発奮材料になる良い機会でした。

2009/02/17

湿度制御セル


昨日から、東海村で東京大学物性研究所の装置iNSEを使って実験中です。

今回の実験では、KEKの瀬戸教授が発注して作った湿度制御セルを初めて試しています。
このセルは試料の温度と湿度制御用の水溜めの温度を別々に制御することで湿度調整を行う、というもので、海外では割と広く使われているらしいです。
ただ、日本ではあまり使っている人が居ないみたいで、今回のセルもフランスの研究所のデッドコピーのような形で作成しました。
いろんな人に配線等、お世話になりながら何とか立ち上げ、ちょっとよく分からないながらもどうにか実験にこぎ着けました。
これがうまくいくと色々と実験の幅が広がるので、結果が楽しみです。

2009/02/10

論文受理

また更新が滞ってますね…

今日は、とりあえず論文が受理されました。
Phys. Rev. Lett.誌に投稿し、refereeが2人ついたのですが、片方はダメ、もう片方はOKというパターンでした。
この時点で、editorは「Phys. Rev. Eに格下げして審査を続けた方が良い」という判断を下したのですが、ダメという方もあまり本質的なコメントではないし、何か別の部分でごねてる(競合相手?)ような気がしたので、食い下がってPRLに再投稿することにしました。
が、結局refereeを変える/加えるといったこともなく「Phys. Rev. Eならこのまま載せる」という結果でした。
とりあえず、論文が受理されたことはめでたいですが、ちょっと微妙な気分です…
割と行けると思う仕事だったのになぁ。
やっぱ、refereeとのバトルは難しいですね。

まぁ、次がんばります。